記憶の欠片
病院に着いて受け付けの人に
今どこにいるのかを聞いたら
病室にいると言われ、
その病室に向かった。
その病室の患者名は
確かに日向智美。
『ガラガラ』
「…日向?」
ドアを開けたら
日向は酸素マスクを着けて
点滴を打ち眠っていた。
あっちゃんに手を握られながら。
「…容態は?」
「…意識不明だって
…救急車を呼ぶのが遅かったって
…このまま意識が戻るかも…
…わからないらしい」
あっちゃんは泣ながら
日向の手をギュッと握った。
「…私….…先生にちゃんと
聞いてくる!」
奈々ちゃんはまだ青白い顔で
走っていった。
「….どうして?」
「….えっ?」
「…どうして智を…
思い出の場所に連れていったの⁉︎」
日向を思い出の場所に
連れていった理由は…
記憶を取り戻してほしかったから。
忘れられなかった人が
もしかしたら日向かもしれない。
だから記憶を取り戻して
ほしかったんだ。
「…そんなこと……
智に姉妹だって告げた時に
どうなったか知ってるでしょ⁉︎
病院の先生が言ってたけど…
無理に思い出そうとしたら
智の身体に負担かかるんだって。
ただでさえ過去のことで
苦しんでるのに…
安易なことしないで!」
「…でも……」
「….でもじゃないの!
これは智の生命に
関わることなの!」
俺ももし日向が
忘れられない人なら
記憶を取り戻して欲しい。
でもなにも言い返せなかった。
あっちゃんの言ってる事は
確かに正論だから。