記憶の欠片

その後
みんなで出店の前を歩いてたら
翔はトイレ、蘭は電話に行ってしまった

そのままその場で待ってたら
小さい女の子が泣きながら歩いてくる

「どうしたの?」

しょうがなく話しかけてみる

「…ママが…いない〜」

泣きじゃくる女の子に戸惑ってたら
そこにあっちゃんがくる

「ママいなくなったんだ。じゃあおねぇちゃんと一緒に探そっか?」

女の子は小さく頷いて
あっちゃんの手を握りながら
歩いて行った。

その後来たメールには

智を頼んだ。
何かあったら電話して
智の鞄に入ってる薬一錠飲ませて。

そう書かれている

薬?なんの薬だろ?

なんてことを考えてるうちに
日向が男の人に話しかけられていた

『ねぇキミ。キミ可愛いね?
今から俺らと遊びに行かない?』

そう俺の人が日向の肩に触れた瞬間、
日向の呼吸は荒くなった。

「日向!」

あっちゃんの言う『何かあったら』は
きっとこの事だったんだ。

とにかく倒れそうな日向をおんぶして
近くの公園に入ってベンチに寝かす

人混みから離れたものの、
まだ荒い呼吸は治らない

…どうしよう

あっちゃんには連絡したし…

なんだっけ…まだあった気が…

…そうだ!薬だ!

日向ごめん、鞄あさるよ

日向の鞄の中を探して見ると、
病院の袋が入ってる

これだな。

袋から一錠薬を出し
日向に飲ませてるとあっちゃんがきた

「…智!」

そうとう走っているのか
息を切らして日向に駆け寄った

「薬は⁉︎飲ましたの⁉︎」

「…うん」

あっちゃんは日向のおでこと髪を撫で
ホッと一息吐く

「ごめん、心配かけて」

「ううん。なぁ… 日向はなにかの病気なのか…?」

ちょっとした疑問を問いかけ顔を
覗くと、
あっちゃんは泣いているようだった。

「…知りたい?」

知りたいか知りたくないか
知りたくないって言ったら
嘘になる

なんだかこれからも
関わってきそうだから

けど、何故か怖い

知ってしまったら、
もっと知りたくなってしまいそう
だったから。

「…誰にも言わないから。
教えてくれる?」

「…誰にも?」

「…うん、誰にも」

「わかった。ちょっとだけね」

あっちゃんは、
覚悟を決めたみたいに話し出す

それはまるで、
何かを守るかのように
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