泡沫幻夢-ウタカタ-
「分かんねぇよ、名前なんか!」
「何か思いつかぬか!? こう……気高く、美しき名は……」
自分が名前を忘れたクセに、傍若無人なヤツだ。
俺はもう一度う~んと唸って、クソ狐の頭を見る。
そして、さっきから意味もなく存在感を放つ紅い華に目を留める。
「……椿」
ギャーギャー喚いていた狐野郎は、ピクリと反応して動きを止める。
また何か言われるのか?
思わず構えた俺に、狐野郎はバッと飛びついた。
正面から飛びつかれたせいで、そのまま後ろに倒れる俺。