泡沫幻夢-ウタカタ-
赤キ月ノ迷イ子
夜11時を過ぎた街中には、人っ子一人居ない。
ここを通る身としては気が楽でいいのだが。
「……?」
如何せん、人が居なさすぎる。
今日はやけに静かなんだな。
普段から通い慣れた道だが、必ず1人や2人は通行人がいた。
でも、俺はそれをすぐに頭の隅へ追いやった。
たまには、人がいないときもあるよな。
バイトが無駄に忙しかったせいで、俺は今、無性に疲れている。
ため息を漏らして、歩行者用信号の手前で止まった俺。