泡沫幻夢-ウタカタ-
吸い込まれたように動かせない瞳。
胸中でそんな風に毒づいた時だった。
「……見たな?」
背後から肩口に声を掛けられて、俺はらしくない悲鳴を上げた。
振り返りざま身構える。
ちなみに、俺の身長は179センチ。
デカくはないが、チビでもないはず。
そんな俺の視線より、遥か下方から甲高い笑い声が聞こえた。
邪気のない笑い声の主を探すと、狐面と目が合った。
「そなた、紅き月を見たのぅ?」