泡沫幻夢-ウタカタ-



 狐面の声は、女の子っぽい。


 巫女を模したような服を身に纏っているソイツは、


 狐面の耳の下に、月と同じくらい紅い椿をさしている。


 幼年っぽい声音が印象的だ。




 「……え?」




 俺は言葉の意味が理解できず、聞き返してしまう。


 カラン、コロン


 高下駄を軽快に鳴らしたソイツ。


 振り返って俺に向き直ると、むふふ、と袖口で狐の口を隠す。


 たぶん、そこにソイツの口もあるんだろう。


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