泡沫幻夢-ウタカタ-



 「わらわが人間界[ココ]に来られたということは、そなたが紅き月を見たんじゃろうな?」




 わ、わらわ?


 呟くと、怪訝そうに眉根を寄せたソイツは大してなさそうな胸を張って言った。




 「わらわはわらわじゃ。


 わらわの名は――はて、なんじゃったかのう」




 あぁ、『わらわ』イコール『私』か。


 妙に納得した俺。


 しかし、肝心の名前を名乗ろうとしたソイツは、腕を組んで考えはじめる。


 というか、自分の名前が分からんって大丈夫なのか……?


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