泡沫幻夢-ウタカタ-
狐は俺の言葉にキョトンとした後、あっさりと俺の思考を打ち砕いた。
「なんじゃそなた、知らぬのか。
紅き月を見た者は、現れし狐の子と共にせよ――
つまりそなたは、今よりわらわの主じゃな」
逃げの体勢を作っていた俺は、更に5秒ほど固まる。
まさか、御伽噺にそんな続きがあったとは……。
「わらわに、名を与え賜うぞ」
狐面の奥で、にっこりと笑っている様子が見て取れる。
ぴったりとくっついたクソ狐を恨めしげに睨んで、俺は大仰にため息をついた。