果たし状
「え」
驚いたと同時に、体の力が抜けて、ゆるゆると座り込んだ。
目の前には、恐らく蹴飛ばされたであろう吉村先輩と、それを今まで見たこともない形相で睨み付ける日高。
助けて、くれたんだ…─
「てめぇ…命拾いしたと思えよ。
これでキスの一つでも奪ってたら、再起不能にするところだったからな。」
そして、殺意のある低く唸るような声に、吉村先輩はびくりとして、逃げ出そうとする。
あ、逃げられる前に…
「吉村先輩!真希にちゃんと謝ってください!」
やつはガクガクと頭を縦に振り、逃げるようにこの場を去っていった。
シーンと静まり返る教室。
はっと自分の手を見ると、震えてるのが分かった。
「ははっ…やっぱ怖かったのかな…」
思わず漏れた本音。
そして、涙。
嫌いなあいつがいることなんて、気にしてられなかった。