キミの理想
理想
なんで誰が見ても魅力的な彼女が、俺の奥さんになってくれたんだろうと、時々不思議に思い、不安になることさえある。
「あれ可愛いよ、ね……いいな」
さっきまでの熱い情事に疲れたのか、俺の隣でうとうとと微睡んでいたはずの彼女が急に呟いた。
瞼が開いたり、閉じたりと、完全に目が覚めたわけではないらしいけれど、そんな姿が可愛くて堪らない。
そんな彼女をずっと見ていたくて、夢の世界へ旅立とうとするところを観察していたら、「可愛いよね」という、なんの脈絡ない発言が飛び出した。
きっと彼女は寝惚けていて、すでに半分は夢の中なんだろう。
「あれって?」
可愛いなと思いながら、起こさないように彼女の頭をそっと撫で、そして尋ねる。
「あれは、あれ。……手」
「手?」
俺がオウム返しをすると、目はほとんど開いていない彼女はふんわりと微笑みながらうんうんと頷いている。彼女の頭にはどんな情景が浮かんでうるんだろうか。俺も共有させて欲しい。
「羨ましい。……あんな風に、なりたいな」
そう呟くと、仰向けにしていた身体を俺の方に向けようと寝返り、そしてぴったりと俺に寄り添ってきた。急に彼女の体温を直接感じて、俺の心臓は大きく跳ねた。
「手、繋ぐの」
俺の胸に顔を埋めながら、彼女は言葉を続けている。普段強がってあんまり自分の気持ちを言わないし、少し天邪鬼な面がある彼女。けれど、今の寝ぼけている彼女なら、心の声を、本心をちゃんと聞かせてくれそうな気がする。彼女が日ごろ感じていることを知りたい気持ちが強くなり、ぼそぼそと聞き取り辛い小さな声に、耳を傾けた。
「80歳過ぎてもあんな風に手を繋いで……いいな、羨ましいなって」
あー、なんとなく分かってきた。病院で作業療法士をしている彼女が、仕事で出会った患者さんの話なんだろう。たぶん彼女が言いたいのは、80代の患者さん夫婦が手を繋いでいて、それが羨ましい、あんな風になりたいって思ったってことだろう。
「あれ可愛いよ、ね……いいな」
さっきまでの熱い情事に疲れたのか、俺の隣でうとうとと微睡んでいたはずの彼女が急に呟いた。
瞼が開いたり、閉じたりと、完全に目が覚めたわけではないらしいけれど、そんな姿が可愛くて堪らない。
そんな彼女をずっと見ていたくて、夢の世界へ旅立とうとするところを観察していたら、「可愛いよね」という、なんの脈絡ない発言が飛び出した。
きっと彼女は寝惚けていて、すでに半分は夢の中なんだろう。
「あれって?」
可愛いなと思いながら、起こさないように彼女の頭をそっと撫で、そして尋ねる。
「あれは、あれ。……手」
「手?」
俺がオウム返しをすると、目はほとんど開いていない彼女はふんわりと微笑みながらうんうんと頷いている。彼女の頭にはどんな情景が浮かんでうるんだろうか。俺も共有させて欲しい。
「羨ましい。……あんな風に、なりたいな」
そう呟くと、仰向けにしていた身体を俺の方に向けようと寝返り、そしてぴったりと俺に寄り添ってきた。急に彼女の体温を直接感じて、俺の心臓は大きく跳ねた。
「手、繋ぐの」
俺の胸に顔を埋めながら、彼女は言葉を続けている。普段強がってあんまり自分の気持ちを言わないし、少し天邪鬼な面がある彼女。けれど、今の寝ぼけている彼女なら、心の声を、本心をちゃんと聞かせてくれそうな気がする。彼女が日ごろ感じていることを知りたい気持ちが強くなり、ぼそぼそと聞き取り辛い小さな声に、耳を傾けた。
「80歳過ぎてもあんな風に手を繋いで……いいな、羨ましいなって」
あー、なんとなく分かってきた。病院で作業療法士をしている彼女が、仕事で出会った患者さんの話なんだろう。たぶん彼女が言いたいのは、80代の患者さん夫婦が手を繋いでいて、それが羨ましい、あんな風になりたいって思ったってことだろう。
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