【BL】忘 れ な い
「なるほどな。」
彼は再び桜を見上げる。
「……もし僕が先に死んだなら、」
「縁起でもねぇ話すんなよ。」
「仕方ないでしょう。もしかしたら僕は今日死ぬかもしれない。あなただって……。」
「…分かったよ。で?」
「僕が先に死んだら、少しでいいんです。覚えていてくれませんか?」
彼が眉間に皺を寄せるのが分かる。
「何を?」
「何でしょう?」
「はぁ?」
彼は顔をしかめて声を上げた。
「おめーは何言ってんだ?」
「何でもね、いいんですよ。少しで良いから、僕が生きていたことを覚えていてほしい。それだけです。」
僕が死んでしまった世界。
僕が知ることのない世界で、
ただ一人……
「あなたにだけは覚えていて欲しいんです。」