哀しみの向こう
「生き…なさい 何があっても 生きるのよ…」

母は 手に付いた 父親の血を 服で拭い 私の頬に 手をあてた。

「あなた…を 守れて良かっ…た 私の大事な子 だからね…」

母は そう言うと 目を閉じたまま 私の手を握っては くれなかった。


「おっ おかあ…さん おかあさん…!!」
私は 急ぎ足で 119番に通報した。


「おかあさんを… 助けて…!!」


私は 救急隊員に向かって 叫び続けた。

「おかあさんを 助けて!!」


私にできる 母への最後の 愛情だった…。
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