彼と私は手を繋ぐ
お砂糖中毒
居留守を使うことは出来たし、そうするべきだったと思う。
だけどそれをしなかったのは、その女の子の顔に見覚えがあったから。
少し間が開いてしまって、一週間ぶりに隆弥の部屋の掃除に来た。
来ると連絡していなかったから、女の子と鉢合わせたら嫌だな、と思いながらインターホンを鳴らしたけれど、隆弥は留守だった。
久しぶりに合い鍵を使って部屋に入ると、部屋の中は文字通り足の踏み場もなかった。
隆弥が自炊しないのがまだ救いだったけれど、それでも洗濯物はすごい量になりそうだった。
立ち尽くしていても仕方ないので、私は一つ一つ家事をこなしていった。
ようやく床が見えて、後は三回目の洗濯物を干すだけ……になった時、インターホンが鳴った。
もちろん隆弥なら鍵を使って入るだろうから、訪問者は女の子の可能性が高いだろう。
だけど宅急便の可能性も捨てきれないので、私はそろそろと覗き穴から外を確認する。
部屋の前に立っていたのは、可愛い女の子だった。
肩位の髪の毛は緩めのウェーブがかかっていて、ふんわりした雰囲気によく似合っている。
……あれ、この人。
女の子の顔に見覚えがあって、悩んだけれど私は玄関を開けた。
そもそも私はこの部屋の主ではないし、開けるべきではなかったのだけれど、女の子の顔を認識してからほとんど無意識に、鍵を開けてしまっていた。