彼と私は手を繋ぐ
一通り泣いた桃ちゃんは、スッキリとした表情で、何だか少し元気になったようだった。
「すいません、ハンカチまで……。洗って返しますね」
「別にいいのに」
律儀な子だな、と思う。
隆弥の周りに居る子にしては、珍しいタイプだし。
……こんなに真っ直ぐな子なら、隆弥も変えてくれるんじゃないかなぁ、なんて。
桃ちゃんと私はアドレスを交換しあって、一緒に隆弥のマンションを後にした。
戸締まりをする私を見ながら、
「……合い鍵、いいなぁ」
ポツリと、桃ちゃんは呟いた。
「おばさんから渡されてるだけだからね。……本当に、そーゆーんじゃないから」
「はい、今日話してみて、……ちょっと分かりました」
桃ちゃんはそう言って笑った。
「……何かさぁ、桃ちゃんなら、隆弥をどうにか出来そうな気がするよ。……っていうか、私個人的に応援したいな」
「……ありがとうございます」
「何か出来る事があれば、言ってね。……話くらいなら、いつでも聞くし」
桃ちゃんと、肩を並べて歩く。
小柄な桃ちゃんは、本当に可愛らしいと思う。
……私が男なら、こんな彼女が欲しいなぁ、と心底思う。
こんな可愛い子が居るのにさ、今頃何やってるんだか。
電話をかける事も出来たけれど、それは桃ちゃんが嫌がった。
まぁ、十中八九他の女の子と居ると思うけれど、それを敢えて確認するのは確かに気が引ける。
「今日、翠さんと会えて良かったです。なんだか、タカくんに少し近づけた気がする」
駅まで一緒に歩いて、別れ際に桃ちゃんはそう言った。
手を振って別れてから、私は何とも言えない気持ちになった。
……隆弥なんかを好きにならなければ、きっと桃ちゃんは幸せになれるのにな。
だけど恋なんて、理性でコントロール出来るものではないのだろう。
あの可愛らしい女の子が、どうか幸せになれますように。
私が願ったところで、何も変えることは出来ないだろうけれど、
そう願わずにはいられなかった。