彼と私は手を繋ぐ
豚に真珠
雨の日は嫌いだ。
洗濯物を干しても乾かないから、仕方なく乾燥機を使う羽目になる。
あれは結構時間がかかってしまうから、無駄にこの部屋に居る時間が長くなる。
……憂鬱だ。
「何飲んでるの?」
乾燥機を回している間暇な私は、勝手にカフェオレを作って飲んでいた。
インスタントコーヒーを使ってレンジで作っただけのカフェオレである。
「……カフェオレ」
「一口ちょーだい」
わざわざ後ろから抱きしめながら、耳元で言う必要があるだろうか。
私はイライラしながら隆弥にマグカップを押し付けた。
「……あげる」
「わーいっ」
隆弥の飲みかけを飲む気にはなれなそうだったので、私はカフェオレを諦めた。
「ん、おいしい~」
外はどしゃぶりで、私は苛立っていたけれど、隆弥は妙にご機嫌だった。
いつもより甘えてくるし、ベタベタしてきて鬱陶しいったらない。
ただでさえ湿度が高いのに、必要以上に近寄らないで欲しかった。
「みーちゃんが作るものって、なんでもおいしいよ」
隆弥は嬉しそうに笑う。
インスタントコーヒーと牛乳と砂糖を適当な割合で混ぜただけのカフェオレ。
きっと誰が作っても大差ない、そんなものを隆弥は褒める。
私は何故か、それに対して無性に苛立っていた。
隆弥に褒められるのは嫌いだ。
まるで貶されているのと同じ位にイライラして、それが何故なのなかも分からない。
……昔は、こうじゃなかった。
例えば小学生の時を思い出してみても、隆弥に対してこんなに刺々しい感情を持っていた記憶はない。
……どうして。
隆弥の事は嫌いじゃないはずだけれど、隆弥の存在は私をひどく苛立たせた。