彼と私は手を繋ぐ


「もも……、町田さん、元気?」

隆弥の事を考えるのは苦痛なので、私は違う事を考えてみる。
フンワリした女の子の笑顔を思い出すと、少し気持ちが落ち着いた。

「え、だれ?」

「だから、町田 桃ちゃん。ほら、傘返しに来たって、言ったじゃない」

「あ~、うん。その話は覚えてるけど……」

隆弥は、う~ん、と唸る。
まちだもも、まちだもも……ブツブツと呟く。

……なんだか、とてつもなく嫌な予感がした。

「だめだぁ、わかんないや。どの子に傘貸したのか、俺覚えてないんだぁ」

ヘラッと、隆弥が笑って、

私は、目眩すら覚えた。

……コイツは、なんて最低な男なんだろうか。

「……なんで」

「みーちゃん?」

「なんで、わかんないの?」

自分でも驚く位に、冷たい声が出た。
心の中まで冷え切ってしまった気持ちになって、私はなんだか泣きたくなった。

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