彼と私は手を繋ぐ
傘を貸しただけじゃない。
桃ちゃんと、寝たんでしょう?
それなのに名前も覚えてないって、どうかしている。
いくら女の子をとっかえひっかえしているからって、そんな事があるんだろうか。
この部屋で隆弥を想って涙を零した桃ちゃんを思い出したら、心臓の真ん中をギュッとされたみたいに痛くなった。
「みーちゃん、どうしたの?……怒ってるの?」
隆弥の目が、不安そうに揺れた。
まるで、叱られた子供のようだと思う。
「ごめん、ごめんね、みーちゃん」
私がどうして、何に怒っているかも分からないくせに、隆弥はこうしてすぐ謝るのだ。
……聞かなければ良かった。
隆弥が残酷な事くらい、私は知っていた筈なのに。
隆弥の無邪気さの中に潜んだ残酷さに、私はゾッとしてしまう。
ピーッ、と大きな電子音が連続して鳴り響いて、釣られるように私は椅子から立ち上がった。
……洗濯物を畳んだら、すぐに帰ろう。
外はどしゃぶりで、スニーカーは多分ぐしょぐしょになってしまうだろう。
だけどこの部屋に居るよりはずっとマシだと思った。