彼と私は手を繋ぐ


桃ちゃんの事を思った。

隆弥に元気かどうか聞いたけれど、私は彼女につい三日前に会ったばかりだった。

パティスリー・ツジに来た彼女は、いつも通りにキラキラとした目で、一生懸命にケーキを選んだ。

新作の、季節のフルーツタルトと抹茶チーズケーキで悩んだ彼女は、結局二つ買っていった。

「カロリーオーバーです、困っちゃう」

そう言って笑った桃ちゃんが可愛くて、私は心がほっこりしたのだ。

桃ちゃんが返してくれたハンカチは綺麗にアイロンがかけられていて、ふんわりと良い匂いがした。

桃ちゃんの幸せを、やっぱり私は願わずにはいられない。

「……豚に真珠」

「……え?」

「猫に小判」

「……みーちゃん?」

こんな男、止めたらいいのに。
隆弥は最低な男だ。

桃ちゃんには勿体ない。
……世界は広くて、桃ちゃんを幸せにしてくれる人は、きっと他にも居るのに。

恋は、残酷だと思う。

私だって、叶わない恋をしている。

だけど桃ちゃんの恋は、私の何倍もきっと苦い。
どうしようもなく切なくなって、私は隆弥の腕を少し強引に振りほどいた。

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