彼と私は手を繋ぐ



「だめ」

「………なに?」

「絶対、だめだ」

隆弥の表情を見る。
今まで、見た事のない表情だった。

「絶対、そんなの許さない」

ぐぐ、っと隆弥の手に力が入る。
肩がどうにかなってしまいそうな位、痛い。

「も、本当に痛いって!」

「どこにも行かせない」

ゴンッ、と鈍い音がして、隆弥は思いっきり壁に頭突きをした。
私の体を壁に押しつけたまま、力任せに抱きしめる。

「どこにも、行っちゃだめ」

………なにが、どうしてこうなったのか。

一体何だというの。

「……みーちゃん、お願い。……俺を見てよ」

……ああ、そうか。

「俺だけ、見て」

謎が解けたみたいに、スルッと。
隆弥の言葉は、私の胸に届いた。

今まで隆弥の口から散々聞いてきた言葉たちが、今更になってようやく私に伝わって来た。

………みーちゃん、好きだよ。


意味が無いと決めつけていたその言葉には、ちゃんと隆弥の気持ちが入っていたのか。

「お願い、みーちゃん………」


隆弥の声は縋るようで、やっぱり可哀想だと思った。
悲しくて、どうしようもなく悲しくて。
胸の奥らへんから込み上げてくる苦しさに耐えきれなくて、あたしは泣いた。

……だって私は、応える事は出来ない。
隆弥を好きになってあげる事は、きっと出来ない。



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