彼と私は手を繋ぐ
私が作るオムライスは、しっかり焼いた薄焼き卵で包むタイプのやつ。
半熟より、こっちが好きだ。
隆弥も私も、無言で食べた。
本当はすぐに帰ってしまいたかったけど、既に二人分を想定して料理を始めていたから、取り返しがつかなかった。
私は諦めて、隆弥とご飯を食べる羽目になった。全然美味しく感じないのは、私のオムライスが下手なのか、それとも、この気まずい空気のせいなのか。
「………おいしい」
もぐもぐしながら、隆弥が言った。
どうやら美味しいらしい。
私には、味が全然わからなかった。
何か話すべきなのに、全然思いつかない。
私の拒絶は、ちゃんと隆弥に伝わったんだろうか。
「……付き合ってるの」
隆弥が聞いた。珍しく真面目な顔をしている。
今日の隆弥は、初めて見る顔ばかりだ。
私は、ふるふると首を振った。
「ただの片思い」
「やめたらいいじゃん、そんなの」
ブスッとした顔で隆弥が言った。
「その言葉、そのまま返すわ」
「無理だし」
「私だって無理だし」
「………みーちゃんのいじわる」
……どっちが、と言いそうになったけど止めた。
何を話しても無駄だとわかった。
「付き合ったりしたら、殺すからね」
サラッと隆弥が言った。私は、唖然として隆弥を見る。
「………誰を」
「相手を殺して、みーちゃんも殺して、俺も死ぬ」
「馬鹿なの?」
「バカだよ。知らなかったの?」
知ってたよ。知ってたけど、こんな馬鹿な事言うとは思わなかった。
あんなヘラヘラした顔の下で、こんな凶悪なものを飼っていたのか。
隆弥が怖かった。得体が知れない。
私は今まで、知らず知らずのうちにこんなに執着されていたのか。
寒気がして、夏だというのに私は身震いする。