彼と私は手を繋ぐ
ぎこちない二人
「ちょーっと、ちょっと!なに、どうしちゃったわけぇ?」
我ながら冷静に働けたつもりでいたのに、どうやらバレバレだったらしい。
バイトが終わって更衣室に入った瞬間に、唯に捕まってしまった。
「何かあったでしょ!辻さんと!」
唯は興奮気味で声を上げた。私は慌てて、人差し指を口にあてる。
「ばかっ、声がデカいし」
「あ、ごめーん」
私が辻さんを好きな事を、知っているのは唯だけだ。……多分、バレてなければ。
だから、あんまり大声で騒がれると、困る。
「後でじっくり聞かせてもらうからね!」
「………わかってる」
それにしても、どうしてバレたのか。
心臓はビクビクしまくりだったけど、表面的には上手くやれていたと思う。
変に避けたりもせず、普通に仕事が出来ていたはずだ。
辻さんも辻さんで、びっくりする位に普段通りだった。さすが、大人である。
一昨日の失態は夢だったんじゃないかと思う位だ。
……夢だったらいいのに、と思う。
辻さんが忘れたフリをしてくれるようなので、もしかしたらそれに甘えてもいいのかもしれない。
……そう思っていたのに。
見る人が見れば一目瞭然らしい。
どうやら、今日の私と辻さんはどこか不自然だったみたいだ。