彼と私は手を繋ぐ



「それに、何よ?」

唯に、ジトッとした目で見られる。

「まだ何か隠してるな?言え、吐けっ!」

「えー、やだ、説明すんの面倒くさいし」

「こら!なんか悩んでんでしょ、言いなさいって」

「えー、……んー、……何か、告白された。隆弥に」

「あ、幼なじみ?タラシの?」

唯には、何度か隆弥の話をした事があった。
大体が愚痴だったりするので、隆弥のイメージはあまり良くないだろう。

「まぁ、翠の事好きなんだろうなぁ~とは思ってたけどね。そうかぁ、このタイミングで来たか……」

ブツブツ、唯は呟いている。
前に自分で、勘が凄いとか言っていた。あながち嘘ではないらしい。

……隆弥の気持ちに気付かなかったのは、私にも少し問題があるのかもしれない。
我ながら、恋愛関係には少々疎い方だと
思う。

だけどあんな、散々遊びまくってるくせに。
今更、ずっと好きだったなんて言われても、ピンと来ない。


「でもさ、好きって言われて、実際どうなわけ?」

「どう、って?」

「付き合ってもいいかな、とか思わないの?」

「え、無理」

ふるふる、首を振った。
それは隆弥にも言ったけれど、やっぱり無理だ。

「うわー、即答しちゃうんだ」

「うん、する。っていうか本当に無理。想像するのも無理」

隆弥と恋人同士なんて、考えたくもなかった。
自分が思っているよりも、私は隆弥を嫌っているのかもしれない………。
いや、嫌いではないはず。

じゃあ、なんでこんなに、
こんなに隆弥を恋愛対象として拒否してしまうのは、何でなんだろうか。

「翠は純情だもんね。見かけによらず」

……一言余計なんだけど。
でも、自分でもそう思う。

恋愛においては、初心者も初心者。
辻さんに、『顔に書いてある』とまで言われたほどの、分かりやすさを持ち合わせている。

そんな私と、爛れきった恋愛をしてきた隆弥とでは、経験値も土俵も違いすぎる。


< 34 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop