彼と私は手を繋ぐ
「それに、何よ?」
唯に、ジトッとした目で見られる。
「まだ何か隠してるな?言え、吐けっ!」
「えー、やだ、説明すんの面倒くさいし」
「こら!なんか悩んでんでしょ、言いなさいって」
「えー、……んー、……何か、告白された。隆弥に」
「あ、幼なじみ?タラシの?」
唯には、何度か隆弥の話をした事があった。
大体が愚痴だったりするので、隆弥のイメージはあまり良くないだろう。
「まぁ、翠の事好きなんだろうなぁ~とは思ってたけどね。そうかぁ、このタイミングで来たか……」
ブツブツ、唯は呟いている。
前に自分で、勘が凄いとか言っていた。あながち嘘ではないらしい。
……隆弥の気持ちに気付かなかったのは、私にも少し問題があるのかもしれない。
我ながら、恋愛関係には少々疎い方だと
思う。
だけどあんな、散々遊びまくってるくせに。
今更、ずっと好きだったなんて言われても、ピンと来ない。
「でもさ、好きって言われて、実際どうなわけ?」
「どう、って?」
「付き合ってもいいかな、とか思わないの?」
「え、無理」
ふるふる、首を振った。
それは隆弥にも言ったけれど、やっぱり無理だ。
「うわー、即答しちゃうんだ」
「うん、する。っていうか本当に無理。想像するのも無理」
隆弥と恋人同士なんて、考えたくもなかった。
自分が思っているよりも、私は隆弥を嫌っているのかもしれない………。
いや、嫌いではないはず。
じゃあ、なんでこんなに、
こんなに隆弥を恋愛対象として拒否してしまうのは、何でなんだろうか。
「翠は純情だもんね。見かけによらず」
……一言余計なんだけど。
でも、自分でもそう思う。
恋愛においては、初心者も初心者。
辻さんに、『顔に書いてある』とまで言われたほどの、分かりやすさを持ち合わせている。
そんな私と、爛れきった恋愛をしてきた隆弥とでは、経験値も土俵も違いすぎる。