彼と私は手を繋ぐ


「何かさぁ、翠はもちろんキョドってたけど。辻さんもね、変だったよ。うん」

「………変、って、どこが?」

「なんかねぇ………、意識してる感じ」

「意識?」

「うん。……女として意識してるんだよ、翠を!」

ドヤ顔で唯が言ったけれど、何か全然説得力がかった。
さっきまで侮れないとか思ってたけど、前言撤回。

「もー、いいよ。てか、いいんだってば。見てるだけでいいし!」

万が一付き合えたら、隆弥に殺されるかもしれないし。
とは、言わなかった。

隆弥の狂気を、唯に話すのは気が引けた。
あんな隆弥を知るのは、私だけでじゅうぶんだと思う。

「辻さんね、結婚願望はあるんだって」

「ふぅん、意外ー」

「なんかね、嫁と子供に憧れがあるんだって」

「あは、なんかそれは想像できるかも。既に一児のパパ感あるよねー」

「わかる、それめちゃくちゃわかる」


唯と、辻さんの話をした。
辻さんと話した色々な事を、どうでもいいような話を、ダラダラと。

唯にとってはきっと、本当にどうでもいい話なんだろうけど、ちゃんと聞いてくれた。

辻さんの話をする時、私は『女の子』になる。
ドキドキして、胸がいっぱいになって、優しい気持ちになる。

………これが恋なんだと、改めて思う。
そして照れくさくて、私はまた赤面してしまうのだ。



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