彼と私は手を繋ぐ



ぱちり。

目を開ける。
体中がベタベタしている。喉がカラカラだった。


「………ポカリ、飲む?」

ベッドの横に、隆弥が居た。
…………来るなって言ったのに。


むぅ、と睨む。隆弥は苦笑する。

「ごめん、怒らないで。どうしても心配だったから」

そう言ってペットボトルを渡された。
ベッドの上で体を起こしながら、それを受け取る。


「別に大したことないし。ただの風邪で、大げさな」

「でも、熱すごかったんでしょ」

計ってみたら、と体温計を渡された。
脇に挟むと、割とすぐに電子音が鳴る。


「………38℃」


体感的にはもっと下がってるかと思ったのに意外と高い。

「まだ結構あるね」

はい、と
今度はタオルを手渡された。
隆弥のくせに、看病らしき事をしている。

………いつもは世話をする側だからか、なんだか慣れない。むず痒い。


「………着替える。汗かいたし」

「え、………う、うん」

「…………なに赤くなってんの。部屋から出てけっつってんのよ」

「あ、そっか。……手伝おっか?」


「………………」


無言で睨みつける。
冗談だよ、と隆弥は立ち上がった。

そのまま部屋から出て行ったのを確認してから、私はベッドから降りた。

クローゼットを開けて、Tシャツとスウェットパンツを取り出す。
ついでに下着も新しいものを出した。

タオルで軽く体を拭いてから、着替えをする。

汗ばんだ体が外気に触れて、少しヒヤッとする。


夢を見たような気がする。
ひどく優しい夢。

だけど思い出そうとすればするほど、それはあやふやになってしまう。
もう思い出すのは無理そうだった。


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