彼と私は手を繋ぐ
「ん。………じゃ、今日から翠ちゃんは俺の彼女ね」
辻さんは満足そうに言った。
………かのじょ。私が?辻さんの?
全然、ピンとこない。
「………夢?」
「もー、何でそんな抜けてんの、翠ちゃん!」
いつものしっかり者はどこ行った、と辻さんは笑う。
しっかりなんて、出来ない。
辻さんの前では、私はどうもいつも通りではいられないらしい。
「だって、実感がわかなくて………」
まさか、付き合ってもらえるだなんて。
これっぽっちも想像していなかったから。
「………じゃあ、実感わくような事、する?」
「え?」
ちょいちょい、辻さんが小さく手招きをする。
ぼんやりしながら、辻さんに顔を寄せた。
あ、意外と睫毛が長い……
なんて思っていたら、ふんわりと唇が触れた。
ぱちり、目が合う。
そのまま何も言わず、もう一度唇が触れた。
「………こら、目は閉じなさい」
辻さんの大きな手のひらで、目隠しされる。
そのまま目を閉じたら、再び唇が塞がれた。
やっぱり、夢だとしか思えなかった。
胸の真ん中らへんがドキドキしてふんわりして、不思議な気持ち。
幸せってこーゆーことなんだ、と何となく思った。
唇が離れて、なんとなく気まずくてお互いに目をそらした。
「あー、なんか、あれだね。恥ずかしいな、結構」
「…………はい」
くすぐったくて、変な感じだ。