彼と私は手を繋ぐ


そんな風に思われてたのか……。
またほっぺたが熱くなりそうで、ごまかすためにコーヒーを一口飲んだ。

甘いチョコ味の後に、ブラックコーヒー。

辻さんがいれてくれたコーヒーは、とても美味しい。


「翠ちゃんはさ、いーの?こんなオッサンで」

「オッサンって……」

「もう30だよ、翠ちゃんからすればオッサンじゃん」

「そんなこと、ないです」


辻さんはカッコいい。
それから優しくて、穏やかだ。

大きな手が、繊細な動きでケーキを作るのが好きだった。

「辻さんは、かっこいいです」

言ってから、また恥ずかしくなって赤面してしまった。
そんな私を見て、辻さんは楽しそうに笑う。


こんな風に誰かを好きになったのは、初めてだった。

…………だから、


やっぱり、隆弥とは一緒に居れないと、強く思った。


隆弥には、幸せであって欲しいと思う。
できれば、笑っていてほしい。

隆弥は色んな人から好かれている。
だから早く、それに気づけばいい。

私に依存するんじゃなくて、ちゃんと。
ちゃんと隆弥を好きになってくれる人と、幸せになってほしい。


「どしたの?翠ちゃん」

ぼんやりしていたようで、辻さんに聞かれてハッとする。


「なんでもないです」


私達は、もう子供じゃない。
ずっと手を繋いだままでは、いれないのだ。



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