好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
本当にただブラブラとその辺を歩く。
ただ歩いてるだけなのに、何か変な気分になる。
それがあたしの隣を歩いている男が関係してるって気づいてないわけじゃないけど。
……なるべく気づかないフリをしている。
結衣はもう瀬戸のことを忘れたのだろうか。
なら、もしあたしが瀬戸を……。
でも、もしまだ未練があるなら……。
そう考えると、あたしは自分の気持ちに気付いてはいけない気がする。
……そんな気がする。
「そういえば夏祭り以来か。
つぐみちゃんに会うのは」
「え……あ、そうだね」
……瀬戸と二人で抜け出した夏祭り。
二人で見た花火。
繋がれた手……。
思い出すだけで顔が火照りそうになって、あたしは慌てて頭を振る。
「そ、そういえば!
あの写真、まだ消してないんでしょ」
「え……あー、姉ちゃんか。
余計なこと言いやがって……」
「しかも待ち受けって、どういうこと」
瀬戸はズボンのポケットに手を突っ込み、ケータイを取り出す。
そして待ち受け画面を開くとそれをあたしに見せた。
それは間違いなくあの時花火を見上げていたあたしの写真で。
何だか恥ずかしくて、それを隠すように瀬戸を睨む。
瀬戸は悪びれた様子もなく笑う。