好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「はー、それにしても。
さっきはショックでぶっ倒れそうだったわ。
もう話したくないとかさ」
「ご、ごめ……」
「でも……」
瀬戸があたしの頭に手を置いたまま視線を合わせる。
一気に近くなった距離に戸惑うあたし。
そんなあたしをよそに瀬戸は顔を綻ばせる。
「何か、嬉しかった。
不謹慎かもしれないけど。
平野が俺のこと想って泣いてくれたんだなーって」
「なっ………」
途端に熱を持つあたしの顔。
それは瀬戸にも分かってしまったようで、あたしの顔を見て瀬戸は笑う。
「すげー真っ赤」
「ち、違うもん。
何かあたしが罪悪感を感じて辛かったから……」
「はいはい。
そういうことにしておきましょうか」
ククッと笑う瀬戸。
あたしは顔を赤くしたまま頬を膨らませる。
「バカ、意地悪」
「そんな顔で怒っても怖くないよー。
てか、むしろ可愛い」
「何でそうサラッと恥ずかしいこと言うかな!」
「ははっ、俺の特技ー。
つぐみちゃんも言ってもいいよ。
俺のことカッコイイって」
「言うわけない!
思ったことないし!」
瀬戸は本当に可笑しそうに笑う。
そんな瀬戸を見ていると、何だかつられてあたしも笑ってしまう。
そうすると、瀬戸は嬉しそうな目であたしを見るんだ。
「やっと笑った」
……そんな優しい声を出すから。
あたしの顔の熱はしばらく引きそうにはなかった。