好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―

これはマズイ状況なんじゃないか。

あたしを教室から連れ出して一言も話すことなく先を歩く結衣。

そんな結衣の表情は見たことがないぐらいに険しい顔。

何だか分からないけどマズイ。

そのことだけはやけにはっきり分かる。


やがて結衣が足を止めた場所は、いつかあたしが瀬戸に告白されたところだった。

……何だか嫌な偶然。


「ねぇ……つぐみ」

「ん……?」


なるべく平静を装う。

変な汗が出てきそうだけど。


「単刀直入に聞くよ」

「う……うん」


直感だけれども。

何となくこの後に言われる言葉が想像ついてしまって。


「つぐみ……瀬戸君のこと、好きなの?」


やっぱり変な汗が出てきた。

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