好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―

結衣がじっとあたしを見つめる。

……こんな強気な表情する子だったっけ。

見たことのない結衣の様子に戸惑いながらも口を開く。


「……どうしてそんなこと聞くの?」


あたしがそう聞けば、本気で言ってるの?とでも言いたげな訝しげな目で見られる。


「……あたし、見たの」

「何を?」

「夏休み。
つぐみと瀬戸君が一緒にいるところ……」


一瞬であの時のことが頭に浮かぶ。

散歩に出て……あたしが泣き出して。

瀬戸が公園に連れて行ってくれて……。

その後、家まで送ってくれたんだっけ。


どの場面を見られていたかは分からないけど……。


「……瀬戸君、見たことないぐらい優しい顔してた」


うん……確かにあの時の瀬戸は優しかったけど……。


「泣いたら……あんな風に優しくしてもらえるの?」


……よりによって一番マズイところを見られていたんじゃないかなって思う。
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