好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―


「あれは……」

「あたし、まだ瀬戸君が好きなの」


力のこもった結衣の発言。

その目には強い意志が現れている。


「フラれちゃったけど、まだ好きなの。
諦めたくないの」

「結衣、」

「だから、いくらつぐみでも。
つぐみでも……邪魔してほしくない」


今の結衣があたしを見る視線はどこか棘がある。

まるで敵認識されているようで……。

……まるで、じゃないな。

敵だと思われてるんだ……完全に。


「ねぇ、つぐみは何であの時瀬戸君と一緒にいたの?
何で泣いてたの?
……つぐみは瀬戸君が好きなの?」


矢継ぎ早にされる質問。

どれから答えたらいいのか。

迷うけれど、早く答えないと結衣の視線が痛い。

噛み付かれているよう……。

……一番早いのは。

この状況を脱するのに一番の近道は……


「……好きじゃないよ」


そう答えることだった。

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