好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―


後で振り返ってみれば、あたしが瀬戸が好きかどうかはともかく、結衣の瀬戸へのアタックは止めておけばよかったと思う。

結衣がまた瀬戸にアタックする、と言った次の日。

あたしが教室に入ると、不機嫌そうな顔をした広里君に捕まった。


「ちょっと、平野」


広里君に話しかけられることなんてあんまりないから驚いていると、広里君はある一点を指差す。


「……何なの、あれ」


そう言いながら広里君が指差す方向に目を向けて、あたしは驚く。

……今まで遠目で見てただけだったのに。

どういう心境の変化なの。


「瀬戸君、あのね」

「あー……はいはい」


瀬戸に絡んでいる結衣。

結衣と瀬戸が話しているところなんて今までほとんど見たことなかったのに。

積極的に瀬戸に話しかけている結衣。


なるほど、あれがアタックか……なんて呑気に思っている自分にもちょっと驚く。


そして何より、教室ではいつもヘラヘラと笑っている瀬戸があからさまに嫌そうな顔をしているのにも驚いた。

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