好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
結衣のアタックが始まってからというものの、瀬戸とあたしはあまり話していない。
今までは瀬戸が絡んできていたけれど、そんな暇も気力もないみたいで。
代わりに、広里君とは最近よく話すようになった。
主に結衣をどうにかしろ、ということだけど。
あたしに言われてもどうすることもできない。
「あー、なかなか落ちない」
色画用紙を切る仕事をクビにされ、のり付けする係に就任したけれど。
こののりがなかなか強力で、水で洗ってもよく落ちない。
あたしは教室から抜け出して一人水道で格闘していた。
親指と人差し指をこすり合わせてのりを落とす。
のりを落としながら考えるのは、瀬戸と結衣のこと。
結衣は瀬戸を落とす気でいるらしいけど。
まるでその気のない瀬戸はあれをどうするんだろう。
どうやってこの状況を抜け出すんだろう……。
ぼんやりとそんなことを考えながら指をこすり合わせていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。