好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
キュッと音を立てて水を止めてから、振り返る。
すると、しばらく見ていなかった顔がそこにあった。
「水谷君」
「久しぶり」
夏祭り以来の水谷君。
何だか少し焼けた気がする。
白いワイシャツから出た腕を見ながらそんなことを思う。
するとそんなあたしの視線に気がついたのか、水谷君は自分の腕に目をやって小さく笑った。
「ああ、これね。
友達と海に行ったら焼けちゃってさ」
「夏休みエンジョイしましたって感じだね」
思わずクスッと笑ってしまう。
「そういえばさ、」
水谷君があたしの顔を見て何か思い出したように言葉を発する。
「瀬戸、何か大変らしいね。
噂で聞いたよ」
「あー……うん。
他クラスまで広まってるんだね」
苦笑いをしながら頷く。
広まるの早いな。
みんな噂好きだからねー……。