好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「はー……本当、つぐみちゃんにだけは勝てる気しないわー」
パタパタと手で顔を仰ぎながらそんなことを言う瀬戸。
「え、いや、でも……」
あたしは思ったことを言ったまでで……。
いまだ顔の赤い瀬戸を見ていると、瀬戸はふいっとあたしの視線から逃れるように顔を背ける。
「あんま見ないで。
本当……カッコ悪いから」
恥ずかしそうにそう言う瀬戸が珍しくて。
見ないで、と言われてもついつい見てしまう。
そんなあたしをチラッと横目で見ると、瀬戸はなぜか観念したように小さく息を吐いた。
「瀬戸……?」
「……俺、そんなに優しくないよ」
「え?」
思わず聞き返すと、瀬戸はちゃんとあたしの方を見てからもう一度口にする。
「俺、そんなに優しくなんてない」
でも、と反論しようとしたあたし。
そんなあたしの言葉を遮るようにして瀬戸は言う。
「俺が優しいのって……平野ぐらいじゃない?」
……あたしを優しい目で見つめながらそう言うから。
あたしはそれ以上言葉が出せなかった。