好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
思わず固まるあたしを見て小さく笑う瀬戸。
「大体さー、男なんてそんなもんでしょ。
好きな子には優しくなるし、どうでもいい人には本当にどうでもいい対応しかしないよ」
瀬戸が足の止まったあたしの手を引いて歩き出す。
「好かれたいからね。
こう必死で優しくするわけですよ」
まるで壊れ物を扱うかのようにそっとあたしの手を掴む瀬戸。
そんな瀬戸を見上げれば、目が合って……優しく微笑まれる。
「つまり、平野が俺のことを優しいって感じたってことはー……俺がそれだけ平野が好きってことになるのかな」
胸の鼓動がどんどん速くなっていく。
瀬戸がじっとあたしの目を見つめる。
まるで吸い込まれそうなほど綺麗な瞳。
「瀬戸……」
やっと出た声は少し弱々しくて。
でも、瀬戸はしっかりと反応してくれた。
「ん?何?」
「……す………」
……そこまで言いかけて、やめた。
思わず出そうになった言葉……。
言ってはいけない二文字……。
「平野?」
「……何でもない」
瀬戸はこんなにまっすぐぶつかってきてくれているのに……。
……あたしは言葉にすることすらできない。