好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「ストップって……」
「んー……だって、多分何言われるか想像できるし。
俺、フラれるの確定だし」
「……………………」
……何も言えない。
何も言えずに、そのまま黙りこんでうつむく……。
瀬戸のことは別に嫌いじゃないけど……
そういう対象で見ていたわけじゃないし……
何より、瀬戸は結衣の好きな人なわけであって……
「ははっ。
そんな気にしなくていいって。
分かってて言ったことだから」
黙り込むあたしを見て、瀬戸は小さく笑う。
「ただ、このままうやむやにしても平野は分かってくれないと思ったからさ」
「え……?」
「分かったでしょ?
俺が高橋に言うなっていった理由」
「あ………」
好きな人がいる。
でも、その好きな人というのはあたしなわけで……
それを知ってしまった今、あたしは結衣に「瀬戸には好きな人がいる」と言うことなんて……できない。
「で、でも……言われなかったら分からなかったのに……」
「あー、そうだな。
でも、何かそれは俺的に嫌だったし。
もし平野が高橋に『瀬戸って好きな人いるんだってー』なんて話してんの聞いちゃったら、すっごい複雑だし」
それに……、と瀬戸があたしの目をじっと見つめる。
吸い込まれそうなほど綺麗な瞳に捉えられ……何となく目をそらしちゃいけない気がして……この場から動けない。
「……それに、そろそろいい加減に分かってもらいたかったし」
「な……何を?」
「あれ、それ本気で言ってる?
ははっ。あー、もう、敵わないな。
何で俺もこんな鈍感娘のこと好きになっちゃったかなー……」
そんなことを言いながら瀬戸は笑っているけど……どこか切なそうで。
いつも飄々としている瀬戸からは想像できない表情で……
それは他の誰でもない……あたしがそうさせてるんだって、それだけはいくらなんでもあたしにも理解できて……
「……ごめん」
ただ、その一言しか言えなかった。