好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
今にもスキップし出しそうな程に上機嫌な瀬戸はスイスイと進んでいく。
瀬戸より身長も低ければ足も短いあたしはそのペースに少し遅れ気味。
「ちょっ……瀬戸、待って……」
息切れし始めたあたしの声に気づいた瀬戸が振り返る。
そして、慌ててあたしの横に来る。
「ごめん、ごめん。
ちょっと嬉しくてつぐみちゃんのこと忘れてた」
笑いながらそう言って、瀬戸はあたしの手をそっと取る。
「えっ、ちょっ……」
突然温もりに包まれた右手に動揺するあたし。
そんなあたしを見て瀬戸は小さく笑う。
「本当に嫌だったら振り払っていいよ」
……ズルい。
そういうこと言われたらあたしが振り払えないのを分かってて言ってる。
「……バカ」
せめてものあたしの反抗。
だけど瀬戸はそれを聞いて嬉しそうに笑っていた。
「つぐみちゃんってツンデレ?」
「っ……はぁ!?」
「まぁ、いっか。
何にせよ可愛いから」
可愛い、と言われたことに対してすぐに反応してしまう。
瀬戸はそれに気づいてるのか分からないけど、上機嫌であたしの手を引いてまた歩き始める。