好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
目の前に広がる綺麗なオレンジ色。
今までこんなに綺麗なオレンジを見たことなんてあったっけ……。
あたしの目はもうそれに釘付けで……。
雲ひとつない空に浮かぶそれは本当に綺麗だった。
感動した思わず言葉を失う。
そんなあたしに瀬戸が笑いかける。
「どう?
ここで見た花火もよかったけど、この夕日もなかなかでしょ?」
夏祭り。
瀬戸と二人で花火を見た土手。
同じ場所で今あたし達は夕日を眺めている。
「綺麗………」
ボキャブラリーが少ないあたしにはその一言しか出てこなかったけど、それでも瀬戸は嬉しそうに笑ってくれた。
「俺のお気に入りの場所。
嫌なこととかあるとよくここに来るんだ」
座ろうよ、と瀬戸が言うので花火の時みたいに土手の斜面に二人で並んで座る。
「ここ、一緒に来たの平野だけなんだよ」
「何で……?」
あたしがそう尋ねれば、瀬戸はちょっと困ったように笑う。
「んー……何て言ったらいいのかな。
引かない?」
コクリと頷けば、瀬戸は少し恥ずかしそうにしながらもゆっくりと口を開いた。