好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―

「ここ、本当に俺の大切な場所だから。
誰にも教えたくなかったし、連れて来たくなかったんだけど……」


瀬戸があたしの顔を見て微笑む。

その距離が思っていたより近くて、少しドキドキする。


「……大切な人と見たらもっと綺麗に見えるのかな、とか考えたらさ。
連れて来たくなっちゃったんだよね。
……平野のこと」


瀬戸の二つの瞳にあたしが映っているのが分かる。

瀬戸はじっとあたしを見つめたまま動かない。


……ドキドキが止まらない。

胸の鼓動が速くなりすぎてどうにかなりそう。


好きになんて……なっちゃいけなかったのに。

友達の好きな人ってだけだったはずなのに……。

気がついたら、こんなに……。


……もう、自分に嘘はつけない。

後戻りなんてできないぐらい……心を奪われてる。


好き……。

この人が……

瀬戸のことが……

……好き。


好きなんだ……

……どうしようもないぐらい。


一度認めてしまったら、もう止められない。

もう戻ることなんてできない。

それでも……


「……平野」


瀬戸の顔が少しずつ近づいてくる。

何をされるのか分からないほど、鈍くはないつもり。

それでも……あたしは避けない。

避けないでどんどん近づいてくる瀬戸の顔を……瞳をじっと見つめる。


……もうあたしは……どこにも逃げることなんてできなかった。
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