好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
本来なら授業中とあってか、廊下には誰もいない。
微かに近くの教室から先生の声が聞こえるだけ。
結衣のまっすぐな視線に少したじろいだけど、ここで逃げちゃいけないと思った。
ちゃんと……言わないと。
「……ごめんね、結衣」
本当は、こんなことになるはずじゃなかった。
結衣の恋のキューピッドになるつもりでいた。
「……好きなの。
……瀬戸のこと」
好きになんてなるはずじゃなかった。
応援するつもりだったの、結衣のこと。
なのに……
「……ごめん」
終わったな、って思った。
あたしはきっと嫌われるんだろうって。
そう思うと結衣を見ていられなくて。
視線をそらして少し汚れた廊下を見ていたのに。
聞こえてきたのは、意外な声。
「……やっと、言ってくれたね」