好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
ビックリして勢いよく顔をあげて結衣の顔を見る。
結衣は怒った素振りなんて全然見せずに、あたしの方を見て笑っていた。
「結衣……?」
「つぐみ、やっと本当のこと言ってくれた」
「え……何で……」
状況が上手く掴めずに戸惑っているあたしを見て結衣は小さく笑う。
「本当はね、何となく気づいてたの。
つぐみが瀬戸君のこと好きなんじゃないかって」
「……ごめん」
「何で?つぐみが謝ることじゃないよ。
あたし、別に怒ってないもん。
だって、そもそもあたしなんてフラれてる身だし」
そう言いながらクスクス笑う結衣。
「前は邪魔してほしくないなんて言ったけど。
もうフラれてるし……あたし、つぐみに遠慮なんてしてほしくないから。
だから、もうあたしのこと気になんてしなくていいんだよ」
「結衣……」
「……だけど、文化祭までは好きでいさせてね。
あたしの最後のワガママ」
そう言って少しだけ寂しそうに笑う結衣に胸が痛む。
だけど、結衣が怒ってないって。
あたしのことを今までみたいに友達だと思ってくれているって。
そのことが嬉しくて。
結衣が過去に瀬戸を付け回していたこととか、それなら何であんな不愉快そうな顔をしていたの、とか。
そんな些細な疑問なんてどこかへ飛んでいって。
ただ、今の状況が嬉しくて仕方なかった。