好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―

時々目が合って焦ってそらすけど。

そんな時、もう一度瀬戸の方を見ればあたしに向かって微笑んでくれてたりして。


そんな些細なことが嬉しくて、胸のドキドキが止まらなくて……。


「そういえばさ、この前の瀬戸何だったんだろうね」


もうすぐ文化祭だねー、なんていつもの様に他愛のない話をしているとリホが突然そんなことを言ってきた。


「この前?」

「何かやたらとつぐみにベタベタしてたじゃん」

「あぁ……」


それはあたしも気になってたけど。

でも、瀬戸があたしにくっついていたのは本当にその日だけで。

次の日からはまたいつもの瀬戸に戻っていた。

何かあったのかな?って聞きたいけど、その後は特に変わった様子もなかったからあたしも気にしないようにしてた。


「ま、気まぐれってとこなのかな。
男子って時々訳分かんないし」


真顔でちょっと辛辣な言葉を吐くリホに苦笑いしながらもう一度瀬戸を見る。

ジャンケンで負けてジュースを買いに行くのをゴネてるみたいだけど、広里君達に無理やり教室から追い出されそうになっている。


「何が楽しいんだろうね」


なんてリホは言うけど。

あたしはちょっとだけああいう男子のノリに憧れるところもあったり……。

すると、ゴネていた瀬戸とぱっちり目が合う。

瀬戸はあたしの顔を見て嬉しそうに笑うと、男子達の輪から外れてまっすぐあたしのところへ。


「つぐみちゃん、一緒に行こうよ」

「え、嫌だよ」

「そんなこと言わずにさー。
リホちゃん、ちょっとつぐみちゃん借りるねー」

「はいはい、どうぞ」


ちょっと……!

あたしの意思とは無関係に教室の外へと引っ張られる体。

瀬戸とジャンケンをしていた男子達の方を見れば、ニヤニヤしながら手を振っている。


「もう……」


なんて言いながらも、ちょっと嬉しかったりする。
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