好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「結衣、あのね……」
重たい足取りで結衣の席に近づく。
結衣はちょうど教科書をカバンに詰めて帰りの支度をしているところだった。
「あ、つぐみ!
ごめん。今日は用事があるから早く帰らなきゃいけないんだ」
「あ、うん。そうなんだ。
……それでさ、」
「あ、そういば放課後に渡してくれるんだよね?」
「うん、それなんだけど……」
「夜、電話するね!
その時に結果聞かせて!
じゃあ、またあとで!」
そう言ってカバンのファスナーを閉めると結衣は足早に教室を出て行った。
「あっ……」
帰っちゃうんだ……。
あたしだって帰りたいのに……。
いや、あたしが嘘をついたのが悪いんだけどさ……。
ていうか、自分で渡せばいいのに……。
なんて思ってしまうあたしは性格が悪いのかな……。
「はぁ……」
「ははっ。
つぐみちゃん、さっきからため息ばっかり」
能天気な声が聞こえてきて、あたしは驚いて勢い良く振り返った。
「瀬戸……」
「あれ、でもそれって俺のせいか。
いやー、俺って罪な男」
「……そんなつまんない冗談聞くような気分じゃないんだけど」
「ははっ。そりゃそうだ。
つぐみちゃん、今お悩み中だもんな」
そうだよ、お悩み中なんだよ。
夜……電話するって言ってたしな。
……はっきり言わなくては。
受け取ってもらえなかった……って。