好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
静かな廊下。
授業中なんだから当たり前。
だけど、あまりに静かすぎて何だか一人残された気分……。
ぼんやりと天井を見上げて頭に思い浮かべるのは瀬戸の顔……。
「っ………………」
……噂なんかじゃなかった。
現実だった。
……でも、まさか結衣とだなんて。
ラブレターを預かったときはこうなることを望んでいたのに。
結衣が幸せそうに笑ってくれることを望んでいたはずなのに……。
この現実を受け止めきれないあたし……。
「はぁ……」
もう一度溜息をついた、その時だった。
静かだった廊下に、人の歩いてくる音が響き始める。
だんだんとこちらに近づいてくる音。
先生……?
ここにいるのバレたら怒られるかな……。
でも、もういいや。
先生に怒られるのなんて、どうってことない。
ここから動くのが辛い。
だんだん大きくなってくる音。
間違いなくあたしのいる方向へと歩いてきている。
来るなら早く来て、と思いながら目を瞑る。
音の出どころがすぐそこまで迫ってきている。
相手からはあたしの姿は見えてるはず。
そして、音があたしのすぐ近くで止まる。
怒られるのかな……。
そう思った、その時。
「つぐみちゃん?」
今、一番聞きたくなかった声が聞こえてきた。