好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―

「瀬戸……」


何でこんな時間に……。

って思ったけれど、カバンを持っているからきっと遅刻組なんだろう。


いつもなら瀬戸に会えて少しは嬉しいはずだったのに、今日は瀬戸の顔を見たくなくて……。

そっと目をそらす。


「何してるの?こんなとこで」

「……別に……」


上手く言葉が返せない。

瀬戸は一瞬首を傾げたけれど、小さく笑顔を浮かべるとあたしの前にしゃがみこむ。


「サボりー?
俺も途中から入るの面倒だしここでサボろっかなー」


……やめてよ。

そんな笑顔浮かべないでよ……。


瀬戸の朗らかな声を聴きながらそんなこと思ってしまうあたし。


「つぐみちゃん?」


返事をしないあたしを不思議に思ったのか、瀬戸があたしの顔を覗き込む。

近い距離。

昨日までだったらドキドキして大変だったはずなのに。


今はなんだか胸が痛む……。


ふいっと顔をそらしたあたしに瀬戸は困ったような表情を浮かべる。


「えっとー……俺、何かしましたかね?」


何かって……。

……言えばいいのに。

言ってくれればいいのに。

結衣と付き合うことになったって、そう言えばいいのに。

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