好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「……平野?」
心配そうにあたしの顔を覗き込む瀬戸。
あたしはそんな瀬戸から逃れるようにして立ち上がる。
「……もういいから」
「え?」
「そんな風に優しくしてくれなくていいから」
お願いだから優しくしないで。
どんどん好きになってしまうから。
「平野?」
「……用がないなら話しかけないでよ」
忘れられなくなってしまうから。
この気持ちがどんどん加速してしまうから。
「え………」
瀬戸が大きく目を見開く。
キツい言葉になっていることは自覚している。
だけど、そうでもしないと自分の心は瀬戸から離れてくれない気がして……。
あたしは呆然としている瀬戸を置いて歩き出す。
「ちょっ……平野!」
瀬戸があたしを呼び止めるけど、振り返らない。
振り返ったらまた泣いてしまいそうだったから。
瀬戸の顔を見たらもうどうしようもなくなってしまいそうだったから……。