好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「っ………………」
あたしの涙を見て……眉を八の字に下げて表情を歪めながらこちらに手を伸ばしてくる瀬戸。
「……嫌……っ」
だけど、あたしはその手を叩き落とす。
……今更、優しくなんてしないでよ。
本当に止められなくなっちゃうじゃん。
「平野……」
「……ごめん。
……何でもないから」
……何でもないわけない。
こんなに涙を流して……。
「……あたし、トイレ行ってから教室戻るね」
とにかく、この場を離れたかった。
一刻も早く。
あたしは乱暴に涙を拭いながら瀬戸の横を通り過ぎる。
「ちょっ……平野、」
瀬戸の呼びとめる声なんて聞かずに、ただただこの場から離れるために足を動かす。
授業の開始を告げるチャイムが鳴り響いたけれど、あたしは教室へと反対の方向へと駆けて行った。