好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
その音を聞いて、瀬戸はポケットからケータイを取り出す。
そして、ちょっと困ったようにあたしを見る。
「ごめん……もう行かなきゃ」
「……いいよ。結衣?」
最後に余計な一言を付け足してしまった。
聞かなきゃいいのに、思わず口から出てしまっていた。
瀬戸は肯定も否定もせず、小さく笑うだけ。
でも、それが肯定の意味だってことは何となく分かる。
「早く行ってあげなよ、待ってるんでしょ?」
「……つぐみちゃん」
……早く行けばいいのに。
いつまであたしのこと見てるのよ。
そんな顔して見ないでよ。
「……ごめん」
最後にそう一言だけ言うと、瀬戸は教室を出て行った。
……再び静かになった教室。
……あたしはしゃがみこんで自分の膝に顔を埋める。
……いつまでこんな想い抱えなきゃいけないんだろう。
早く忘れたいのに。
……どうしていなくなってくれないの?