好きじゃない、はず。―ラブレター・マジック―
「……だから、あたしは……」
「ストップ。
好きじゃない、とか言わないでよ。
そんなこと言われたら俺傷ついちゃう」
少し冗談めかして瀬戸はそう言う。
だけど、真剣で……ちょっと切なそうな顔。
……あたしは何も言えなくて、そのまま俯く。
「はー。俺って面倒くさい男だなー」
「え?」
「だって、そうでしょ。
フラれるの分かってるから。
だから直接平野の口から聞きたくないんだよね」
「瀬戸……」
「平野のこと困らせてるのは分かってる。
けど、ごめんな。
俺だって……はっきりフラれるのは怖いよ」
あ………。
「ははっ、なんて。
こんなこと言われる方が困るよなー。
ごめん、今のは忘れて」
「瀬戸、」
「ついでにこれも捨てちゃってちょーだい」
そう言いながら瀬戸はあたしに手紙を差し出す。
「す、捨てないよ。
ちゃんと読むよ……」
「え、読むの?
いいよ、俺が読んだから」
「アンタが読んだって意味ないでしょーが」
「大丈夫、大丈夫。
ほら、ちょうどそこ穴開いてるし。
そこから突っ込んじゃいなよ」
「突っ込まないし」
「え、そのための穴じゃないの?」
「違うわ!」
あたしがそう言うと、瀬戸はケラケラとおかしそうに笑った。
「はー、やっぱつぐみちゃんと話してるの面白いなー」
あ……戻った。
つぐみちゃんに戻った。
平野になったりつぐみちゃんになったり……。
……瀬戸の呼び方は安定しない。